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「子育て」の原点

更新日:2019.2.6|1(2週間) / 135(累計)

「子育て」の原点
教育の効果を数値化・可視化して「教育を科学する」のが最近の流行っています。

しかし、そもそも人間の価値はどうやっても数値化・可視化できない。
その人間を育てる営みが教育である。
つまり、教育の価値や成果を数値化・可視化することは原理的に不可能です。

教育によって得られる【成果】は人によって違う。

ある人は、勉強して身につけた知識と技能を利用して画期的な発明を成し遂げ、大金持ちになるかもしれない。

ある人は、勉強して身につけた教養とコミュニケーション能力でたくさんの仲間を作り、社会を変革するかもしれない。

またある人は、数学の世界にのめりこみ、食べることも忘れて数式の美しさに没頭するかもしれない。

さらに、その成果は、教育を受けたその瞬間に表れる場合もあるし、数十年後に表れることもある。

それこそ、人の数だけ「勉強」の意味がある。

つまり、その子供が勉強して何を得るのかを、予言することはできない。

要するに、勉強の価値は、やってみなければわからないということである。

教育とは本来「こうすればこうなる!」と効果をうたえない類のものなのだ。

教育にわかりやすい成果を求める風潮を利用したビジネスだ。

ビジネスの原理が教育を汚染しているのではないかと言われているがビジネスとは、お互いにとって価値あるものを、即時的に等価交換をするしくみである。

しかし前述のように、本来、教育によってもたらされる価値は予言できない。

つまり教育に、ビジネスの原理はあてはめられない。

そこで無理矢理、教育にビジネスの原理をあてはめるとどうなるのか考えてみると、教育に予言できる成果を求めるようになるのである。

たとえば中高6年一貫教育といっても、その教育の目的は生徒の人生を豊かにすることであり、6年の間に即時的に効果を発揮することではない。
希望する進路を実現させたり、テストの点数を上げたりすることは、教育の必要条件ではあるが、十分条件ではない。

「いい学校」に通って希望の大学には入れたけれど、なぜだか人生はうまくいかないというのでは本末転倒だ。

それなのに、6年間の教育にわかりやすい成果が求められるようになると、大学進学実績や偏差値ばかりが注目されるようになる。

教育の価値が数値化されると、子供の価値も同じ数値で計られるようになる。

「あの子は○○学校の子、あの子は△△学校の子。○○学校の子のほうが出来がいい」とか「あの子は偏差値60、この子は偏差値40。偏差値60の子のほうが出来がいい」とか。

それがそのまま親の能力までを物語るようにもなる。
「あの子の親は、息子を○○学校に入れたからすごい。この子の親は、娘を△△学校にしか入れられなかった」など。

教育の領域にビジネスの原理が入り込んできていることを象徴している言葉がある。

「人材育成」です。

結論から述べると「教育」は子供ありきの営み、「人材育成」は目的ありきの営み。
出発点が真逆ですが、昨今の教育議論では、これら2つが混同されていることが多い。

ケヤキにはケヤキの育て方があり、松には松の育て方がある。

それぞれ適切な環境を与えられれば、小さな種子は自らの力で芽吹き、自らの力で根を張り、自らの力で枝葉を伸ばし、大木となる。
それが『教育』です。

つまり教育とは《それぞれの人間の特性を見極め》《好ましい環境を与えること》

「どんな教育がベストか」を論じることには意味がないと考えています。

「どうやったら多様な人間が育つか」を論じるべきかもしれません。

一方、「人材育成」とは、何らかの目的に合う材料として、一定のスペックをもつ状態に、人間を加工すること。

どうやったら効率よく「人材」を育成することができるかに主眼が置かれる。

あたかもビジネスのように、施策と効果の関係を数値化・可視化してPDCAサイクルを回すことは「人材育成」には有効だ。

エビデンスベースで語れることの大概は「教育」の効果ではなく「人材育成」の成果なのである。

論理的に「ベストな教育」を導き出すことは、論理的に不可能なのだ。

「これからは先の読めない時代」などといわれるが、焦ることはありません。

人間は、常に「先の読めない時代」に臨機応変に対応し、助け合い、何百万年も進化してきたのですから。
今を生きる子供たちにも、その能力が備わっているはずです。

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