おぐなさん
1981年生まれ 保育歴14年目
公立認可園 主任 0歳児クラス担当
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−おぐなさんはどうして保育士になろうと思ったのでしょう?
中学生のときに読んだ、灰谷健次郎さんの「兎の眼」という本がきっかけです。さまざまな背景や個性を持つ子どもにフォーカスし、子どもたちの心に寄り添って一人ひとりの良いところを見つけながらクラスを作っていく。そんな主人公の姿から、先生という仕事に強い憧れを抱きました。
先生と呼ばれる仕事の中でも保育士になろうと思ったのは、その頃職場体験で保育園に行ったことが関係しています。手作りおもちゃを持って保育園に行ったら、目の前で子どもたちが喜んでくれた。自分の足にまとわりつくように、体全体で喜んでくれたその姿に感激しました。その経験がすごく嬉しくて、保育士になろうと思いました。
−保育の仕事で、一番苦しかったことを教えて下さい。
私は職場の同僚に恵まれてきたと思っていて、おかげで人間関係に悩んだことはあまりありません。
保育士になって5年めくらいだと記憶しているのですが、私が担任した年長組で父子家庭のAくんがいました。言葉の暴力、ネグレクトといった虐待めいたことを受けているような子でした。保育園でもハサミを人に投げる、椅子を窓に投げ込む、怖い言葉を発するなど落ち着きがなく、私たち保育者を試すような言動も多かったです。私の想いとしては愛情をたくさん与えたい、それでも年長というと身体も大きく力もある。さらに今まで言われたこともない言葉を浴びると、愛したい反面恐怖で足がすくんでしまう感覚でした。
Aくん自身も辛い想いで毎日を過ごしている。そしてこの虐待の連鎖はどうやらお父さん、その親からも起こっている様子。根深い問題でお父さんだけが悪いと言い切れるわけでもない。最善の策を関係者一丸となって、手探りで見つけていく日々でした。
−それは大変でしたね。その時に考えたことはどんなことだったのでしょう?
Aくんを思うと正直「本当にこれでよいのか?もっと出来ることがあるのかもしれない。」という気持ちが拭えないことも…。そこは自分で自分自身を認めて納得して、前に進もうと心がけました。その後小学校を転校したようなので現在のことはわからないのですが…入学したあとAくんは支援学級に入り、授業参観に行ったこともありました。担任として出会ったときよりは良くなっている印象を受けましたね。幼児期は人格形成の最も大切な時期、この時期を逃してしまうと取り返しがつかない。しつけよりも、子どもを尊重して健やかな心を育てていかねばならない、それが保育士の大きな務めだと思います。子どもはいつでも良くなろう、成長しようという意欲をみんな持っています。子どもの力を信じて任せること、この姿勢も大切だと考えています。
−どんな経験からも何かを学び取って次に活かしていく、おぐなさんの前向きな姿勢が伝わるエピソードです。
最後におぐなさんが思う、自分の良いところを3つ聞かせてください!
そうですね、いつも意識していることは他人を責めないこと、問題は皆で解決すること、つねに良い方向に向かっていけると信じること、でしょうか。
その姿勢は全てお話から伝わってきます!笑顔もとても素敵で、和やかなインタビューになったことにも心から感謝です。この度は貴重なお話の機会をありがとうございました!
保育の世界はきっと、外から見たらおかしいと思うことがたくさんあると思うんです、と冒頭話してくださったおぐなさん。広い視野を持とうとすること、違和感を伝えること、関係者を巻き込んで解決しようとすること。日々意識して努力しているからこそ、行動に移せているんだなと感じました。おぐなさんの行動力と深い愛に信頼を置く周りの保育者、保護者は多いのではないでしょうか。
おぐなさん、この度は貴重なお話をありがとうございました!
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(2021.4 聞き手・編集:鏡味)