おかかさん
1988年生まれ 保育士歴2年目
2018年 国家試験にて保育士資格取得
三男児の母
ーおかかさん、早速ですが、保育士を志した理由を教えていただけますか?
これまで保育とは全く違う仕事をしていました。保育というものに興味を持ちだしたのは長男が保育園に通い始めてからなので、最近のことです。園の先生方が自分の分からないことや不安なことをいつも良い言葉で返してくれ、それが本当にありがたく、いい仕事だなと思ったのがきっかけです。
ー全く違った業種からの転職なわけですね。もう少し詳しく聞かせてください!
長男の育休明け、前職に復帰しました。ハードな営業の仕事と初めての育児とで時間的にも体力的にもいっぱいいっぱいでした。夫も忙しく、実家も遠方で、毎日ワンオペ状態。今思うととてもしんどい時期でした。そんな時に力になってくれたのは、前述のとおり保育園の先生方です。
資格を取ろうと思えたのにはもう一つ違う壁があって。当時のハードな仕事を今後も子育てに十分注力しながら続けていけるのかと不安がありました。そしてもし辞めることになったら、その時何か資格があった方がいいなと思ったんです。ちょうどその時、育児というものに向き合いたいと思った時期だったり、保育園っていい場所で保育士っていい仕事だなって思った時だったり、近所でパート保育士をしてみるのもありだなと思ったり。色々重なって、今ここで勉強して保育士の資格を取ってもいいのではないかと思ったのです。
ーなるほど。独学で取るのは大変だったのではないですか?
「根性」ですね!公式HPの過去問を全部×5周くらい解きました。育休が明けてからは、昼間は仕事なので子ども達が寝ている間に勉強しました。キーボードや読み聞かせ練習もひっそりと。
ー仕事、子育て、勉強の、まさに三足のわらじですね。その根性、大尊敬です!同じような境遇で志す方に向け、何かアドバイスはありますか?
本屋に行くと参考書が数多くありどれを選べばいいのやらという感じでした。そして通信教育は高額です。何をやっても受かる人は受かるし受からない人は受からないと思うので、ここはひたすら過去問を解いて出題者の意図をくみ取るのが一番近道ではないかと思ったんです。お金もかからないし。あと解いてて気づいたのは、過去問って保育士になるために知っておいてほしいことが出されていて、それって年々少しずつ変わっていくんですよね。だからどれも均一に取り組むのではなく、最新のものから重点的にやるのがいいのかなと思いました。
―その工夫と頑張りで見事に資格を取ったわけですね! パートタイムでいざ実際に働いてみて、何か感じたことはありますか。
私はすごく志しが高かったというよりも、まずは知らない保育の世界を知りたいという気持ちで飛び込んだんです。だから思い描いていたものがはっきりあったというわけではなくて。でも、初めて保護者目線でなく中から保育というものを見て感じたことはあります。保育士の方々が思っていたよりも働くことを楽しめておらず、大変な思いをされている方が多いなということです。
―大変な思いが目立ったのですね。
入ったのが新設園だったこともあり、みなさん初めましてでまだ腹を割って思いを伝え合えていなかったのかもしれません。それは衝突をさけているからか、ただ機会を持てていないからか分からないんですけど。その影響もあってか、保育に対する自分のビジョンをしっかり持てておらず、だから苦しくなってきてしまうのかなと感じました。
―なるほど。どうしたら改善されるんでしょうか。感じるところはありますか。
「一体感」が必要なんじゃないかなって。一つの課題について考えるのに、各クラスがそれぞれ別で決めていたらどうしても思いの相違が生まれてしまいます。例えばおもちゃの持ち込みの是非について、0歳児クラスと1歳児クラスで見解が違い、別の対応をしていました。他にもそのようなことが重なって、「こちらとあっち」みたいな変な溝ができてしまったようです。あと、対応が違うと保護者の方にも混乱を招いてしまう。各クラスそれぞれの思いを吸い上げ話し合って決めていくのがいいかと思います。園長を中心にして一体感を築いていく必要があるかなと。
―なるほど、「一体感」ですね。 では一方で、おかかさんが楽しいなと感じたのはどんなところですか。
私、実は特段子ども好きというわけではないんです。と言って子どもは3人いるんですが(笑) だから正直本当に保育を楽しめるのかなと懸念もありました。でも実際入ってみると、思っていた以上に楽しいんです。今を無邪気に生きる子ども達と過ごす時間っていいなと思いました。少なくともおじさん達と過ごすよりはずっと楽しい(笑) おむつ替えや公園あそびも、自分の子に毎日するのはしんどいなと思うことがあったんですけど、仕事でやれば意外と楽しい。
―それは良かったです!なぜそう思えたのでしょう。
みんなでやっているからですかね。1人で3人の子どもを見るのでなく、3人で10人を見る方が、もちろん責任が分散されるわけでないですけど、張り詰めた気持ちが和らぐのかなと思います。
―チーム保育のいいところですね。 おかかさんは今後もフルタイム保育士でなく、短時間で勤務される予定なんですか?
そうですね。保育の世界に入って思ったのは、私が目指したいのは、保育士の働き方をより良くしたいということです。自分が現場のプロフェッショナルになるのではなく、現場を知り、良いところや課題を見出したうえで、一人でも多くの保育士がキラキラと輝いて働けるよう努めたいです。
―保育士の資格を生かした、新しい働き方ですね。改めて、おかかさんの今後の目標をお聞かせ願えますか。
保育士って、保育の現場以外でも生かせる持ち味がたくさんあると思うんです。例えば、子どもの体調などを日々気遣っているからこそ人のちょっとした変化にも気づけるとか、いつも子ども達を褒めているからか相手のいいところを見つけるのが上手なところとか。その持ち味や経験を生かし、保育園の中以外でも活躍する保育士が今後増えてもいいのかなと思います。保育を極めていくことはもちろん重要です。でもそれだけに拘らず、違った働き方もあるよということをさりげなく、背中で知らせていけたらいいなと思います。そう感じてもらえるように、自分が日々努力し、良い姿として映ればいいなと思っています。
―最後に、おかかさんのように異業種からの保育への転職や、保育士のいろいろな働き方を考える方がこれからも多くいらっしゃるかと思います。何かそういった方へのメッセージはありますか。
まだ合うか合わないか分からない異業種にいきなり両足を突っ込むのはリスキーだなと思っています。まずは副業みたいな形で、パートタイムで働いてみるとか保育の世界を中から見聞きして肌で感じてみるといいのかなと思います。副業NGだったら週末のボランティア、保育士の友人知人に詳しい話を聞いてみることからでも。それで、もし合わないと思ったら辞めればいいんです!みんなやりたいことを見つけようとするけど、やりたくないことを見つけるのもそれはそれで収穫だと思っています。気負いすぎず、これが“天職”だなどと期待しすぎず、まずは「やってみる」ことが大切なんじゃないかなと思います!
「根性」「洞察」「新しいことへの挑戦」おかかさんの姿からは頼もしいフレーズが数多く連想されます。でも実は気負っておらず、いつもフレキシブルに対応しようとしているのですね。強さだけでなくしなやかさを感じます。どのような形でも、子どものため、保護者のため、そして保育士のために尽力したいという気持ちは変わりありません。今こそ色々な角度から保育を見つめ、一丸となりより良い保育の未来を創っていこうという思いを感じる、心強いインタビューでした。おかかさん、ありがとうございました。
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(2021.4 聞き手・編集 : 土屋)