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ほいくえVoice

【vol. 34前編】保育の主役は、子どもたち

更新日:2022.6.6|5(2週間) / 372(累計)

猫月だんくるおすてうすさん
40代 保育士歴16年目
公立認可保育施設勤務 
 
―猫月だんくるおすてうすさんが保育士になったきっかけを教えてください!
 
「将来はドラクエを作りたいな〜」なんて思っていた、理数科に通う高校生でした。その当時興味があったのはプログラマーやシナリオライターといった仕事です。そんな理系学生だったある日、いじめられた中学生が自殺するというニュースが飛び込んできました。その後加害者家族は係争(両者が互いに裁判で争うこと)を選択したんですよね。「悪いことをしたわが子と一緒に謝れない、現実を受け入れられない親が存在する」ことに大きな衝撃を受けました。そして、「保護者こそ支援が必要なんじゃないか」と強く感じたのです。元々子どもは好きでしたが、子どものためにも保護者を支える仕事に就きたいと思い至りました。突然の大きな進路変更にも、迷うことは全くなかったです。
 
―「保護者支援」がキーワードだったのですね。
 
保護者と日常的に関われる仕事ってなんだろう?から進路を考えました。小学校教諭は毎日保護者と会うわけではないなとか、児童相談所職員はいよいよ切羽詰まった支援が多いのかなとか。その中でぴったりだと思ったのが毎日保護者と顔を合わせる保育士という仕事でした。
 
―これまでたくさんの保護者とお話してきたと思いますが、猫月だんくるおすてうすさんが保護者に特に伝えたい、伝えていることはどのようなことなのでしょう?
 
さまざまな未就学児を保育する中で、保育士の役割として常に意識しているのは「この子たちが20年後、自分でごはんを食べられるように、社会の中で生きていけるように」ということです。なので保護者の方にも「幼少期のコミュニケーション」については、よくお伝えしています。
 
―「幼少期のコミュニケーション」とは?
 
一つは「愛される力」です。就学前の段階で身につけてほしいと思っています。学校で教科を学んだり知識を身につけたりしても、それぞれ得手不得手があり、できることできないことがあり、人は一人では生きていけません。そういう時に「ありがとう」「ごめんなさい」「手伝ってほしい」がどれも自然と言えることが、大きな強み、誰もが生きる上で必要な力になると思っています。
 
―猫月だんくるおすてうすさんが保育で子どもたちと関わるときにも、そういったコミュニケーションなのでしょうか?
 
「子どもは子どもたちの中で育つ」という野島千恵子さんの言葉があります。それを念頭に、私は必要なときに適切な支援ができる保育士でありたい。ある時4歳児二人が一つしかないケーキのおもちゃを持ってきました。それぞれ「私が先に使っていた」「貸してくれない」と訴える。大人に味方をして欲しいんでしょうね。そこで大人が判断したら、どちらかに肩入れしたことになる。「これ一つしかないんだ〜。二人とも楽しく遊ぶためにはどうしたらいいと思う?決まるまで先生が預かっておくね。」と一言。そうすると二人で話し合いを始めて、私に報告に来たんです。「二人で一緒に遊ぶことにしたー!」と。解決策を考える力を、子どもは持っていると思います。もちろん子どもたちだけでは解決できないこともあるので、できることもできないことも受け止めながら、子どもたちの可能性に蓋をしないで見守る姿勢というのは心がけています。
 
―「できることもできないことも受け止めながら」っていうのが、いいですね。
 
「やればできるは、できない」と受け止めたい、ということも保護者に伝えていますね。成長過程でこれができるようになったんだから、いつもできる、できてほしいとわが子にはついつい思ってしまう。でも「できるけどやりたくない」ときなんて、大人でもあるじゃないですか。休み明けで気が乗らないとか、気圧が低いと調子が悪いとか(笑)保護者にも「手抜きしたい日ってありますよねー」と話したり、子どもにも「今日は月曜日だから、そういうこともあるよね〜」なんて言葉がけをしたりして、できない時やできないことも全部受け止めたい。子どもも自分のことを許せる、「(今は)やってー」と言える人になってほしいと思っています。
 
「20年後の子どもの姿」「子どもを育てる保護者」など、目の前の保育を大事にしながらもその先も見据えて、考え、行動している姿が印象的でした。未熟な状態で生まれながらも「向上しよう」「大人みたいになろう」とする意識を持つ、人間の本能的なものをなるべく生かす、そんな壮大な思いすら感じられたインタビュー。哲学を聴いているようでとても学び深い時間でした!後編では猫月だんくるおすてうすさんが「保育が楽しいと思えるようになった」という、師匠さんとの出会いについてお伺いしていきます!
 
【猫月だんくるおすてうすさん×保育のひとコマ】
保護者面談の必殺アイテム。「うちの子は~」という保護者の思いを受け止めた上で、「それって、こういう一面ですよね」と見方を変えてもらえます。「短所は長所」が目に見えて分かりやすいアイテムです。(猫月だんくるおすてうすさん)
 
 
猫月だんくるおすてうすさんのブログTwitterはこちら。
 
(2022.4 聞き手・編集:鏡味)
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