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ほいくえVoice

【vol. 37前編】見られている意識を持つ

更新日:2022.8.1|5(2週間) / 153(累計)

ちひろさん
30代 保育士歴13年目
認可保育園勤務(育休中)
 
―ちひろさんは3人のお子さんを育てるお母さん保育士ということで。現在は育児休暇中だとお伺いしました。保育士になったきっかけからお聞かせください!
 
実は「保育士になろう」と思ったことがないまま、養成校への進学を決めたのです。私は商業科に通う高校生だったのですが、進路を決めるときは「どうしよう、どうしよう」としばらく悩んでいたんですね。周りの友人たちは商学部や経済学部などに進学先を決めたり、就職先を決めたりしていきました。一方で私は「数字とにらめっこする学びについていけるかな」「すぐ就職はしっくりこないなぁ」「どうせなら手に職をつけたいな」などと悩んでいて。そんなときに担任の先生が、指定校推薦の校内選考の話を持ってきてくれたのです。
 
―それが保育だった、と。
 
子どもや小さい子のお世話が好きということもありましたし、地元では名の知れた学校だったので、いいかもしれないと思いました。「受かったらラッキー」と、記念受験のような感覚でした。嵐の櫻井翔さんが保育士を演じたドラマが好きだったことも、ふっと入ってきた「保育」という選択肢を、ポジティブに受け入れられた一因かもしれないです(笑)
 
―そのドラマ、私も観ていました(2003年「よい子の味方」)!現実はいかがでしたか?
 
授業が詰まっていて課題も膨大、実習も大変な2年間でした。現場経験が長い先生方が多くいたので、現場で求められること、また現場のリアルな話もたくさん聴くことができたことはよかったです。
 
―教わったことで印象的なことはありますか?
 
例えばすごく基本的ですが「字は丁寧に書こう」というものです。保護者や同僚に見せる、見られているという意識を持つと、連絡帳や園だよりの書き方も変わってきます。また3歳児以上の幼児になると、子どもたちが文字にも興味を持つこともありますよね。「子どもに字を見せる」場面もあるので、ここでも丁寧に書きたいと思えます。「字は丁寧に」「なるべく空欄を作らない」などは話してみると当たり前のことばかりですが、現場では役立っている感覚です。
 
―養成校で聴いたことがそのまま、今でも現場で生きているのは素晴らしいですね。
 
あと保護者への伝え方についても、養成校で教わった印象深いお話があります。保護者、特にお母さんは、わが子の初めてを大事にし、可能であれば自分の目で見たいと思っているのです。だから、もしも保育中にその子が初めて立った、歩いたなどがあっても伝えないこと。その時の伝え方は、"そろそろ立ちそう、歩きそうなどの仕草や動作が見られるので、注目して見てください"と、保護者が逃さないように促す言葉かけが大切だと考えています。実際に保育園で勤務してみて、そういった配慮があまりされていないことにも気づきました。
 
―実習担当として、保育学生の指導にあたることもあるとお伺いしました。どんなことを伝えていますか?
 
私は保育学生のとき、実習って本当に怖かったです。知らない人たちの中に入って、ずっと緊張するし、評価される不安もあります。ただ怖がっていたらそれは子どもにも伝わるので、まずは元気に、笑顔で、オーバーリアクションでもいいから子どもとのやり取りを楽しんでほしいなと思っています。
 
―子どもとのやり取りを楽しむ、いいですね。
 
自分が発言したひと言にすごく喜んでくれたり、新しい発見を教えてくれたり、子どもの反応に感動することがよくあります。子ども一人ひとりの言葉や表情や様子に目を向けると、保育って本当に楽しいなぁと思えるのではないかなと。
時間がかかってしまっても、ピアノで間違えてしまっても、読み聞かせで噛んでしまっても気にしないです。丁寧に、分からないところは質問したり相談してくれたりしてくれたら、失敗したって全然構いません。「ここがわからない」「助けてほしい」「つまづいている」とわかれば、私たちが全力でフォローしますから。
 
―なんと頼もしい!実習に臨むにあたりこういう態度はやめたほうがいい、というところはありますか?
 
身なりを整えて来ない方がまれにいます。例えばズボンの裾を引きずっていたり、手の指がすっぽり隠れるくらいの長袖で保育をしたり、ヒゲを剃らずに来た方もいました。仕事をする上で危険がないか、衛生面でどうなのかを想像し、また見られる立場として整えるべきところを考えてほしいなと思います。
あとはやはり、実習生には元気に積極的に来てほしいというのもあります。覇気がない、質問に来ない、声が小さいと「ちゃんと伝わっているのかな?」と、教える側としては心配になります。
 
ちひろさん、リアルなご経験をお話いただきありがとうございました!後編では保育の仕事で大変だったこと、楽しいこと、今後の展望などを伺います。
 
【ちひろさん×保育のひとコマ】
1番上は私が保育園に入園した最初の年(2歳児クラス)の連絡帳。残りは私の娘の歴代・現在の連絡帳。どれも全て、私の宝物です。
母が書いてくれた連絡帳は、仕事をしていて、一つ上の姉もいる中で、毎日の育児日記のように色んなことが詳しく書かれていました。私がお誕生会で"当時、好きな子と結婚します!"と将来の夢として言ったことも…(笑)逆に当時の担任の先生方も、返事だけでなく、一日の様子がわかるように細かく記入してくれていたり…。読んでいて、泣いてしまったぐらい嬉しかったです。
だからこそ、保育者、母となった今、特に連絡帳の記入は丁寧に、読み返した時にその風景が想像できるように書こうと思うようになりました。(ちひろさん)
 
 
ちひろさんのTwitterはこちら
 
(2022.6 聞き手・編集:鏡味)
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