menu
  • TOP
  • ほいくえVoice
  • (特別号)【経営者Voice vol. 7】人はいくつになっても変われる
ほいくえVoice

(特別号)【経営者Voice vol. 7】人はいくつになっても変われる

更新日:2022.7.11|5(2週間) / 189(累計)

藪本敦弘さん
40代 病児保育・保育園運営をする会社の経営者
 
―藪本さんは異業界から保育業界に転身されたとお伺いしました。きっかけをお聞きしたいです。
 
きっかけは長女ですね。長女は小さい頃は身体が弱く病気がちで、保育園に預けはじめの頃は、月の半分くらい保育園をお休みするなんてこともザラにありました。ですのでその当時、病児保育所の存在に大いに助けられていたのです。ところが転居したら転居先には病児保育が全然なくて、困った…!というのが最初のきっかけです。
 
―それでご自身で作る、というのがすごいです。
 
ないなら行政に陳情するなど、何かできる余地があるのかもしれないと思い役所に相談しました。その時に担当部の方に「病児保育はニーズがないから作りません」と言われたのです。僕自身がニーズなのに、面と向かって言い切られちゃった(笑)もう頭にきちゃって、なら俺がニーズを証明してやるよと。
 
―病児保育をする会社として起業されて、ニーズを証明したのですね。
 
会社員を辞めて、異業界で本当に0からのスタートでしたが、3年後には病児保育所の利用会員が100家庭ほどに。当初「ニーズがない」と言っていた役所の方にも「ニーズがあることは分かりました。」と、数年越しでご理解いただけました。
でも、公的な補助が出る病児保育室にするのは保育園に併設していないといけませんでした。それからは「病児保育がある保育園」という形態を意識して、地域に根ざした事業展開を進めています。
 
―運営する保育園では、保育士の育成にも力を入れているとお伺いしました。
 
異業種から入って感じたことの一つに、「学習」や「成長」というものに対する業界全体の意識の違いがありました。保育も転換期を迎える中で学習習慣がない、知識のアップデートがされない保育士はこの先厳しいだろうな…との想いもあります。
うちは公的な保育士研修だけでなく、社内のキャリアパスに基づく独自の研修プログラムがあり、保育士としての成長にかなり力を入れています。ですので、うちは研修が多いと思われるかもしれません。逆に、学ぶことに楽しみを見出す人にはもってこいの場だと思いますが、保育士歴◯年という肩書にぶら下がることなく、学ぶ姿勢を持ち続けてもらいたいと願っています。
 
―先ほど取材させていただいた保育士の方が、「この会社に来て読書習慣がついた」と仰っていました。人って変わるのですね。
 
人はいくつになっても変わることができます。ただし「変わる気があれば」という注釈が付きますが(笑)
よい方向に変わろうとしている保育者にとっても、いい職場を提供したいです。
 
―藪本さんは保育士資格も取得されて、保育現場に入ることもあるのだとか。
 
私は国試組なのですが、資格試験を通して一通り「保育」というものを学び、今でも様々な本や教材、研修、他保育園の見学などを通して学び続けていますが、保育って探求しがいのある面白い領域だなと思っています。読んでも読んでも学びが終わらないですし、理論や知識として得たことを現場において実践して検証することができることもとても面白いです。
 
―現場の保育士を見て感じることはありますか?
 
自分は一人の保育士としては全然レベルが低いなぁと思います(笑)
社内外問わず、視野が広い保育士、引き出しが多い保育士を見ると、すごいなぁと感心しますよね。
 
―そういった「すごい保育士」の特徴ってあるのでしょうか?
 
やっぱり周りの人をよく見ていますよね。子どものこともよく観察していますし、同僚の保育者のこともよく見ています。そして無意識なのかもしれませんが、人から学んでいる様子も見られます。そして何より、学び続けよう・保育士として変革し成長しようとする意識が強い人が多いです。
 
―反対にこういう保育士はちょっと、と思うところはありますか?
 
先のすごい保育士の真逆ですね。「学ばない」「成長しようとしない」「現状維持で満足している」そうした保育士はちょっと。。。と思います。保育士資格をとってからがスタートなのに、学校を卒業してまるで成長していないのでは?と思える人などですね。
そのため、社内外関わらず保育士さんには「保育士をどうしてやっているのですか?」と質問させてもらうことがあります。その回答にその人の保育に対するスタンスが見えますよね。「子どもと触れ合っていると癒やされるから」など自分主体の回答の方が一定層います。
子どもに関わることで、子どもがこのように変わったや成長した様子を見ると楽しい、嬉しいというのならいいのですが。そういう人を見ると「あなたの満足のために子どもがいて、それで保育しているの?」と感じます。
 
―率直な意見をありがとうございます!最後に保育学生の方に伝えたいメッセージはありますか?
 
入職してすぐに絶望しないでほしい、ということです。
「学んできたことと実際の現場が違う」「こういう世界だと思って飛び込んだのに、全然違う」「子どもの主体性が蔑ろにされている」と感じさせてしまう保育現場が、今現在の保育業界においては残念ながらまだまだ多いと感じています。私たちの保育園も課題や変わっていかなければならないところが、まだまだたくさんあります。
ですので、その現場・保育園が自分の思っていたものと違っていても、緩やかにでも法人や現場が変わろうとしているか?というスタンスを客観的に見て欲しいと思っています。変わろうともがいている法人や保育園は、必ずよい方向に、よりよい保育に向かっていくと信じています。
 
藪本さん、この度はインタビューにご協力いただきありがとうございました!藪本さんには保育交流イベント「ほいくえのわ」にも来ていただきます。時々毒舌的なところもありますが、保育に期待や希望を込めてのお話だと感じました。またいろいろなお話を聞けることを楽しみにしています。
 
【藪本敦弘さん×保育のひとコマ】
保育で一番大事にしているのは「連携」とのこと。リーダーの先生と一緒に(右が藪本さんです)。
 
藪本敦弘さんのTwitterはこちら
 
(2022.7 聞き手・編集:鏡味)
 
  • この記事をシェア:

その他のほいくえVoice