menu
ほいくえVoice

(特別号)【園長Voice vol. 4後編】肯定で人を育てる

更新日:2022.10.3|5(2週間) / 152(累計)

キリン先生
40代 保育士歴13年目
私立認可保育園勤務 園長
     
キリン先生のインタビュー前編はこちら
 
前編で、子どもの主体性を大事にした保育園で園長を務めているとお伺いしました。以前から子どもの主体性には重きを置いていたのでしょうか?
 
実はそんなこともありません。子どもたちを一つにまとめるのがいつでも良いとされる、一斉保育色の強い保育園で長い間勤務していました。
 
―どこかで保育観が変わった、ということでしょうか?
 
前編でもお話ししていますが、保育の仕事から離れたときの経験が大きいです。その時は保育の経験もある程度積めてきて、オールマイティーにできるようになってきた手応えもあったので、「一度自分の力を他業界でも試してみたい」という気持ちで保育から離れていたのです。そこでは全然大したことないな、ということを痛感するのですが…。周りの人たちはパソコン作業もサクサク、電話対応もスムーズ、営業も自分よりずっと上手でした。
またいつか保育に戻りたい気持ちだったので、他業界にいる期間もSNSで保育に関する投稿を見たり、保育者の集まりにも参加したりしていたんですね。保育に熱意のある人、先行く形で学び続けている人、いい保育を実践しようとしている人、さまざまな保育者の話を聞きました。「これまで自分がやってきた保育」と照らし合わせて、客観視できた感覚がありました。保育の仕事を続けているときに聞いたら「自分の保育を否定された」ようで受け入れづらかったかもしれません。アップデートしなきゃいけない、柔軟に考えながら変わらなきゃいけないのだ!と思えたきっかけは、そんなことです。
 
―キリン先生が園長として、モットーにしていることはありますか?
 
自分の保育観を答えすぎない、ということです。園長先生はどういった保育観で保育していますか?どんな保育がしたいですか?と職員や応募してきた保育士に尋ねられる場面があります。もちろん自分には自分なりの保育観があります。それでもそういった質問を受けた時は会社が掲げる保育観と、保育所保育指針に基づいた保育を目指しているとお話するようにしています。
 
―園長の保育観で保育園の様子が左右するというお話も聞きますし、物差しになるものがないと保育がしづらいというお話も聞きますよね。
 
一斉保育色が強い保育園に長くいたので、そこをベースに築かれた自分の保育観が一番いいとは思っていません。そして、そのような自分の保育観で保育園を作りたいとも思っていません。
 
―会社が掲げる保育観が確立している、というのもポイントのような気がします。キリン先生が職員の方と話す時に心がけていることはありますか?
 
否定はしないことです。個人個人で保育観があって、完全に一致するなんてことはないです。例えば壁ぺったんをさせて園児をまとめようとしている職員がいたら「そういった考え方もあるけど、ここではこういう保育をしましょう」とお伝えします。私たちの保育園では「壁ぺったん」という言葉は推奨していません。その結果子どもたちがまとまらなくて、「あれでいいんですか?!担任保育士は何をしているの?!」なんて反応があったとしても、非効率に見えていたとしても「私たちの保育園が目指すのはこういうことなので、いいんです」と言えるように。同じことを伝えるにもタイミングや言葉選び、シチュエーションはものすごく考えながら、肯定で人を育てていきたいです。保育園が目指すところは明確に丁寧に伝えるようにしていますし、そこを目指している職員の姿は評価するようにしています。保育園の姿勢を打ち出しているので、職員の方に判断していただけたらいいのかなと。
 
―これからは保育園も選ばれる時代と聞きます。キリン先生の保育園はどのようなことを考えられているのでしょう?
 
2つの観点がありますよね。一つめは現実的な観点として「選ぶのは子どもではなく保護者である」ということ。子どもたちに対してどんなにいい保育をしていても保護者対応がいまいちなだけで、反感や不信感、悪評にも結びついてしまう。いいことをしているのに見せ方一つで保育園や保育士の評判は下がるって、もったいないですよね。ですので、保護者対応や保護者のニーズは意識したい気持ちがあります。
二つめにもなりますが、じゃあ保護者の要望だけ聞いていればいいの?というと、決してそうではないですよね。子どもの主体性を大事にしたいと思うと、ぱっと見の完成度は劣るように見えると思います。子どもたちが皆きれいに座れていて、お給食も完食できて、発表会も完成されていて、というのは分かりやすくて見えやすいですから。見えづらいけど大事にしたいところを、いかにプラスにして伝えられるか、わかってもらえるかの努力は必要だと思っています。口コミを聞いてわざわざ転園して来てくださる家庭もいらっしゃるので、一定の効果は出ているように思いますが、引き続き頑張っていきたいです。
 
キリン先生、貴重なお話をありがとうございました!自分の保育観をあえて出しすぎない、というお話が特に印象的でした。終始職員の方に対して尊重する気持ちが表れていて、小さなことでも耳を傾けてくれる園長先生なんだなということが容易に想像できました。
 
【キリン先生×保育のひとコマ】
様々な行事で扮した様子です。何の行事かはご想像にお任せします(笑)保育者は時にはコスプレイヤーにもなれますね♪(キリン先生)
 
キリン先生のTwitterはこちら
 
(2022.8 聞き手・編集:鏡味)
  • この記事をシェア:

その他のほいくえVoice