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ほいくえVoice

(特別号)【園長Voice vol. 5前編】生きる力とはなにか

更新日:2023.2.13|14(2週間) / 282(累計)

キエさん
30代 保育士歴6年目
小規模認可保育園勤務 園長
 
―キエさんには、2022年10月のほいくえのたまごフェアに出展いただいた繋がりでインタビューもお願いしています。保育士になられたのは6年前なのですね。
 
大学で経営学を学んだ後、営業職をしていました。ノルマに追われ、心を無にして働かねばならない状況が辛くなってきて、20代後半で心機一転ドイツにワーキングホリデーに行ったのです。
 
―ドイツ!!何かゆかりがあったのでしょうか? 
 
いえいえ、英語も片言、ドイツ語も全然わからなくて、友人が移住しているという理由だけで渡りました。割と考えずに行動しちゃうタイプですが、その時はもう、辛い仕事から逃げ出したい気持ちが大きかったのだと思います。
 
―それにしてもすごい行動力ですね。ドイツで保育の仕事に出会うのでしょうか?
 
友人には3歳になる子どもがいて、第二子を妊娠していました。それで3歳の子と赤ちゃんと、二人の子どものお世話をするうちに保育の仕事が面白いかも、と。そのままベビーシッターのアルバイトも始めました。日本に帰ったら保育士になりたいと思いつつ、そのあとフィリピンに渡って半年程滞在することになります。
 
―ドイツにフィリピンに、とてもインターナショナルです。フィリピンでもベビーシッターをされたのでしょうか?
 
フィリピンでは物資が少ない中、裕福ともいえない地域で、ドイツの都市部で富裕層家庭に向けてベビーシッターをしていたときと対照的な環境でした。紙おむつはガサガサで、寝返りしただけで漏れたりして、発狂しそうになったことも(笑)布おむつや有機野菜といったビオ製品が身近だったドイツとは全く異なる環境でした。
環境としては貧しいかもしれないけれど、家族がみな仲良く、のびのびと暮らしていて、大人も子どもも幸せそうでした。それはドイツでも同じ感覚でした。なので「幸せとはなにか」「生きる力とはなにか」をすごく考える経験にもなりました。
 
―「生きる力」は以前、キエさんの保育園に取材に行った際にもキーワードとして上がりましたよね。
 
私は大学を出てそれなりに社会人経験もあって、この日本で履歴書を見たら「まあ働けそうだよね、普通に生活できそうだよね」という人材かもしれないけど、異国の地でバックパックを背負ってボロボロのTシャツを着ている私は言葉も上手く話せないし、一体何者なんだろう?個人として何ができる?とか、そんなことを考えていましたね。
「生きる力」とは学歴や経歴ではなくて、誰かと楽しく過ごしたり想いを伝えたり、自分のやりたいことに人を巻き込んでいけたり、いいと思ったものを自分で選べることなのだろうな、というのがその時に至った結論です。私はそういったことを子どもたちと学んでいきたい、そして子どもたちに伝えていけたらなおいいのかなと思って保育士になりました。
 
―ちなみにそれまで、保育園や保育士に対してどんな印象を持っていたのでしょう?
 
…正直、印象も何もなかったですね。保育園には優しい先生たちがいて、楽しく過ごす場所で、長時間預けられているのってちょっとかわいそう、くらいのイメージでした。国家試験で保育士になったあと、保育士の友人が勤める保育園に就職することになります。
 
―そこはどのような保育園だったのでしょう?
 
教育色が強く、跳び箱、数字、文字、楽器となんでもやりますといった保育園でした。初めはすごーい!!子どもたちの能力を引き出している!!と思っていたのですが、次第に「子どもたちは本当にやりたいのかな?」が気になり始めます。その保育園では厳しく指導できる、保育園のプログラムに導ける保育士がいいとされていました。子どもの気持ちに寄り添うとか、興味関心を大切にする、といったことには重きが置かれず、私はここではいい保育士にはなれないなと。もちろん合う子には合う環境だと思うので、そこでの保育が悪いとか間違っているとは思っていません。ちゃんと叱ってください、プログラムに向かわせてくださいなどと言われても上手くいかず、ここで保育士をするのは向いていないのかもしれないな…と思い、転職をすることにしました。
 
キエさん、多彩なご経験から保育士一年目の等身大のお話をありがとうございました!後編では園長を勤める保育園のこと、どんな保育園を目指しているかなどを伺っていきます。
 
【キエさん×保育のひとコマ】
ワーキングホリデー中に出会った仲間(inスペイン)です。
この時は1か月以上かけて約800キロ歩きました。大変でしたがいい思い出です♪(キエさん)
 
(2022.11 聞き手・編集:鏡味)
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