ちゃおさん
60代 保育歴:子沢山でとぎれとぎれ
東京都認証保育園 園長
ちゃおさんのインタビュー前編はこちら。
−ちゃおさんの園長歴は20年以上。園長として心がけていることはどのようなことなのでしょうか?
園長として自分がどうするべきか?はずーっと悩んでいます。園長のカラーは必要だと思っています。そしてカラーが強いということは、不快感を持つ人がいるということも理解しています。
それと権限のある人の発言は、本人たちが意図しなくともどうしても上から下へ、指示としての性質を帯びてしまいます。そしてある程度そのような力が感じられるものでないと、組織はまとまらないとも言えます。
−職員に何かを伝えることも、いろいろと気を配るのですね。
分かってもらわなきゃ、説明しなきゃと思えば思うほど、私は理詰めになりやすい。でも理詰めって聞き手の部下からすると「息を抜ける場所のない会話」になってしまう。一緒に働いていると職員のことが大好きになる、それでも園長として距離を取らないといけない。とっても悩ましいです。私自身は職員みんなを応援できる園長でいたい、そのためには何が必要なんだろう?って。第三者評価のあとにも悩んだことがあり、その時の担当者が「あなたは今のままで良い。」とお話くださったことがあって、すごく救われました。
−詳しくお聞かせください。
その方は「威圧感のある園長はよくない。職員に対しての想いがあって、一緒に保育を楽しんで、一緒に提案できたらそれで良いと思います。」と言ってくださいました。その時に「職員の呟き、小さな声、想いを吸い上げて、それを代弁するのが園長の仕事なんだ」と気付いて。保育者が子どもたちのもやもやした気持ち、言葉にならない想いを吸い上げて保育をするのと全く同じことなんだ、と。保育業務の改善を考えるときも、誰にとってどんなメリットがあるのか、どこをどうしたら職員のためになるのか、職員の声をきちんと拾っていかないといけないと思っています。
−園長も保育者も仕事のスタンスは変わらない、と。とっても素晴らしい気付きですね。業務改善で考えていることはありますか?
現在の職場はICTを取り入れているのですが、本当に職員のためになっているのか?は課題が多いと感じています。確かに打ち込みは早くなりますし、運営側のメリットは感じられます。こちらの職場は非常勤職員含め誰でもすぐに見られる状態ではないのですが、保育の現場では非常勤職員も活躍していて、ふと書類を確認したい場面が多々ある。日々変化する子どもの育ちを昨日、先週、先月…と簡単に追う、みんなで情報共有をするにはペーパーベースがやりやすいと感じます。例えば職員全員が個人のスマホで書類データを見られるようにすると、リスクマネジメントをどうしようとか持ち帰り仕事が簡単にできる環境になってしまうのかなとか、新たな研修が必要かなとか、別の懸念が出てきます。職員の仕事や手間を減らすために考えること、工夫することがまだまだたくさんあると感じています。職員との交換日記のように日誌を活用していた私は、システム化された日誌の中身も非常に使いづらい。
−日誌からも職員の想いを拾う、保育を材料に育成するスタイルだったのですね。
日々の保育の気付きの中から、保育者は育っていくものだと思っています。保育の中でこんな嬉しいことがあった!という記載にも、つまづいているな…と読み取れる記載にも赤ペンを入れて、職員と想いを共にすることで一歩ずつ前に進んできた。ICT化された日誌では赤ペンが入れられないんですよねぇ。保育者や子どもたちに合わせて項目をアレンジしたくてもできない。「保護者支援」という項目があるのですが、特段な書き残すことがない日だって普通にあります。この項目を毎日設定する意味は本当にあるのかな?とか。今後も引き続き園長として運営側の目と、現場側の目を持って業務改善を考えていきたいです。
職員に対しても子どもたちに対しても愛の深い人、そして行動力のある人だなぁと感じられるインタビューでした。保育士をやめようと思ったことは?の質問には「こんなにいい仕事ってないですよ。私は保育士の仕事を“子どもハーレム”と呼んでいます。」と、即答してくださいました。6人の育児経験もあるちゃおさん、育児真っ只中の時期は「保育園でも家でもあまり変わらなかったです。みんな自分の子どものような感覚で、職場でも家でも空き箱で何か作っているな~という日々も。」とのこと。まんべんなく公平にという信条を胸に、大きな愛をたくさん与えてきた日々。これからも一緒に楽しんで一緒に提案する、頼もしいリーダーでいてほしいです。この度は貴重なお話をありがとうございました!
(2021.5 聞き手・編集:鏡味)