Sさん
20代 保育補助歴3年目
―保育補助として働きながら、保育士資格取得のため勉強中のSさん。元々は全く違う仕事をしていたのだとか。保育の仕事をしようと思ったきっかけは何でしょう。
子どもが好きという気持ちはありましたが、実は特に保育へ強い思いがあったわけではありません。転職を考える際にたまたま思い浮かび、未知の世界ではあるが一度やってみようかなと思ったのがきっかけです。
―なるほど。そんな始まりから、今では資格取得に奮闘中なのですね。その経緯をこの後伺っていきたいと思います。まずは、保育補助という立場に求められていることは何でしょうか、お聞かせください。
初めは保育士の補助的役割や雑用が多く、保育がスムーズに回るためのサポートが求められているという認識でした。でも経験と共に次第に変わってきたように感じます。今年度より担任の一員となり、補助として指示を待っているのでなく、自分で全体を見渡しニーズを考え動けることが必要になったと思っています。
―ご自身の意識が変わったのですね。率先して動くための課題は何でしょう。
思ったことをすぐに発信することでしょうか。その都度声に出さないと対応が遅れてしまいます。あの時本当はこう思っていたのに…などと後悔することがあってはいけない。迷っていることでもまずは何でも声に出して共有する。それが今の自分の課題です。
―思いを発信する、重要ですね。具体的にどのように実践していますか。
自分には思いを言葉にする力が足りないと引け目があり、以前はメモにまとめてから相談するなどしていました。でもそれでは遅いことに気が付きました。思った時にはすぐ相談。遅くてもその日のうちには声に出し、明日に持ち越さないように心掛けています。
―では、資格を取得できた際、改めてどのような保育士になるのが目標ですか。
子どもの発達や関心に沿った保育を展開できる保育士です。そのために勉強を重ねていきます。決してなんとなく保育を行うのでなく、根拠や目的のある保育を計画・展開していきたいです。それに加え、発達の流れは把握した上で、個人差に即した働きかけもできるようになりたいです。
―目標に近づくため今取り組んでいることはありますか。
資料を見て勉強しているのもそうですが、現場で学ぶという面では、先輩の一つひとつの対応を観察してその意図を自分なりに考えるようにしています。そうして考えた上で先輩に聞いて答え合わせです。発見や疑問をそのままで終わらせず、つねに理由や根拠を明確にして引き出しを増やしているところです。
―まさに未来の保育士として成長中のSさん。保育士としての「ウリ」を持つために伸ばしたい魅力はどのようなところでしょう。
人の気持ちに寄り添い考えるところでしょうか。成長著しい乳児の保護者は特に悩みも多いだろうと案じています。多くの経験・研鑽を積み、気持ちに寄り添いながら様々な角度からのアドバイスができるようになりたいと思います。
―なるほど。他にも魅力を教えてください!
うーん、諦めず努力するところですかね。自分は要領が良くないんです。資格の勉強、日常の書類、製作物など、もっと効率的にできればいいなと思っています。でも自分なりのペースで、諦めない心・挑戦する気持ちはつねに持ち励んでいるところです。
―自分のペースでできることを精いっぱいやる。その積み重ねがいずれ花を咲かせるのでしょうね。もともと保育士を目指していた訳ではないSさんですが、同じような境遇の人に保育の仕事を勧めるポイントはどのようなところでしょう。
私自身、保育士資格を取ろうと決したのは1年ほど前。保育補助なりに子どもに多く携われるようになってきた頃のことです。子どもと丁寧に関わっていったことで、その子が家でも自分の名前を出してくれるようになりました。そして保護者からも感謝の言葉を頂けるようになり。嬉しかったですね。補助なりに役に立てているのだなと感じました。また、子どもの成長に触れる機会もぐんと増え、やりがいを感じるようになりました。そのような経緯で保育士としてもっと頑張りたいと思え、資格取得を目指すようになったのです。なので、子どもの成長や反応を日々ダイレクトに感じられるところ、そして自分が子どもや保護者のためになっていると実感できるところにやりがいがありますよ、とお伝えしたいですね。
―前職とは全く違うお仕事ということで、比べてみていかがですか。
保育の仕事は、他に比べ人との濃い関わり合いが多いと感じます。その分直接反応が見えるところが面白いです。また、物を扱う仕事との最大の違いは、命を預かるという責任の重みだと思っています。
―何年目になっても忘れてはいけないプレッシャーですね。働く人はどのように違いますか。
保育士の方々はとにかくコミュニケーション能力の高い人が多い気がします。子ども達や保護者、職場内のあらゆる人達と円滑にコミュニケーションを取れるのがすごいなと。また、色々と細かいところをすぐ察知するのも特長だと思います。アンテナがピンと立っています。そしていつもパワフルです。裏で大変なことがあったとしても、子どもや保護者の前ではそれを感じさせない明るさがすごいと思います。
―一方で、保育士を目指そうと思ってもコミュニケーションに苦手意識のある人もいるかと思います。そのような人はどうしていったら良いでしょう。Sさんは得意な方でしたか?
いえ、私も苦手でした。初めの頃は子ども達へも先生たちへも緊張しっぱなしで、事務連絡をするような接し方だったように思います。そして絵本や手遊びも恥ずかしく、殻を破れずにいました。自分はこの仕事に不向きだとも思っていました。今では…殻を破り切れているのかは分かりませんが、苦手意識はなくなってきたと思います。手遊びや絵本は経験回数を重ねることで平気になってきました。そして、こちらが恥ずかしがっていたら子ども達は決して楽しめないと気付きました。一旦自分をさらけ出そう、失敗しても周りが盛り上げるから大丈夫、と先輩の後押しもあり、少しずつ自分を解放できました。自然に笑顔になれたのを覚えています。苦手なことを認め、周りに頼りながら楽しむことが大事。そうしていくと次第に色々慣れてきます。恥ずかしがり屋の壁を乗り越えるコツはそこかなと思います。
―周りのフォローのありがたみを実感、まさにチーム保育の良いところですね。その経験があるからこそ、同じように苦手意識のある保育士に出会った際は気持ちがよく分かり、「一人じゃないよ、一緒に作り上げようね」と思えそうですね。
元々はそれほど保育に興味はなかったとおっしゃるSさん。ですが今では仕事と勉強の二束のわらじで日々奮闘されています。そうさせるだけの魅力が保育にはあると気付かれたのですね。現場を経験しながらの理論の勉強。大変かと思いますが吸収率も高いのではないかと思います。まさに未来の保育士Sさん。ぜひ夢を掲げ続け、ご自身の持ち味を存分に生かした保育を探求していっていただきたいです!この度は貴重なお話をありがとうございました。
〈Sさん×保育のひとコマ〉
勉強に行き詰った時は甘い物を食べて気分転換します!
(2021.6 聞き手・編集:土屋)