いろいろ
跡見よ蘇婆訶
枕もシーツも快適な眠りには欠かせない。
これらはすべて「必要な時」には誰でもそれらを大切にするということである。
渇すれば水を飲み、空腹になれば食を欲することと同じである。
だが、そのような「必要」が満たされた後こそが、実は人間としての大切な在りようなのである。
脱いだ衣類を「きちんと畳む」のは美しい行為である。
眠りから覚めたら、心地良い睡眠を恵んでくれた布団やベッドをきちんと整えておく心遣いは美しい。
用のある時にはさんざんお世話になりながら、用が済めばどうでもいい、というのでは心が貧しく淋しいではないか。
上掲の「跡見よそわか」の「跡」は足跡、「見よ」は「見なさい」、「そわか」は「蘇婆訶」と書き、「成し遂げる」という意味の仏教語である。
これは一種の呪文のような唱えごとだが「何か物事をした時には、それがきちんとできているかどうかを見直し、確かめよ」という教えである。
幸田露伴は娘の文にこの言葉を繰り返し教えた。
「もういいと思っても、この呪文を唱えてもう一度見直すものだ」と、自分の行いの最後まで責任を
持てと説いた由である。
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