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跡見よ蘇婆訶
脱いだ衣類を「きちんと畳む」のは美しい行為である。眠りから目覚めたら、心地よい睡眠を恵んでくれた布団やベッドをきちんと整えておく心遣いは美しい。用のある時にはさんざんお世話になりながら、用が済めばどうでもいい、というのでは心が貧しく淋しいではないか。
上掲の「跡見よそわか」の「跡」は足跡、「見よ」は「見なさい」、「そわか」は「蘇婆訶」と書き「成し遂げる」という意味の仏教語である。これは一種の呪文のような唱えごとだが「何か物事をした時には、それがきちんとできているかどうかを見直し、確かめよ」という教えである。
幸田露伴は娘の文にこの言葉を繰り返し教えた。「もういいと思っても、この呪文を唱えてもう一度見直すものだ」と、自分の行いの最後まで責任を持てと説いた由である。
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